しばらくして、野獣様を軽々と(かつ)いだ大牙くん。


「よいしょっと……じゃあ、俺はこれから豹の介抱(かいほう)をするよ。お(うち)はどこかな? よかったら、うちの執事(しつじ)に車で送らせるけど」


――執事、車。

そのワードを聞いて、礼儀正しい黒服の執事と高級外車が思い浮かんだ。


「そ、そこまでしていただかなくて大丈夫ですっ!」

「そう? 遠慮しなくていいのに」

「本当に大丈夫ですっ! このあと予定があるので。助けてくれてありがとうございましたっ! 私はこれで失礼しますっ!」

「どういたしましてーっ! 仁愛ちゃん、また明日学校でねーっ!」


大牙くんに頭を下げてお礼を言い、笑顔で手を振る彼を背にして、私はすぐにこの場をあとにした。


危うく、大牙くんにも私が一般人だってバレるところだった……。

もう面倒ごとに巻きこまれたくないから、今度からは知らない場所にむやみに立ち入るのはやめよう。


そう心に誓って、私はその足で図書室へと向かった。