バラとは違った甘ったるい匂いがすると思ったけど、それってまさか――あの甘ったるい匂いが野獣様のフェロモンなの!?


「どうしたの? 顔が赤いけど……」

「き、き、気のせいですっ!」

「あっ、そう?」

「は、はいっ!」


さすがに、初対面の年頃の男の子に――。

「あれが、野獣様のフェロモンですか?」

――なんて、口が()けても言えない……。



「そういえば、キミの名前は?」

「し、白居仁愛……です」

「仁愛ちゃんねっ! 俺は福満(ふくみつ)大牙(たいが)。大牙って呼んで!」

「は、はぁ……」


気が動転してしまったけれど、これ以上フェロモンのことについて聞かれなかったので、ひとまずホッとした。