うわぁーっ!!

こんなところにバラ園があったんだ。

なんて素敵なところなの。

まるでおとぎ話の世界に迷いこんだみたい。

しかも、背もたれつきのアンティークなウッドベンチが置かれているガゼボもある。


人の気配がまったくない、とてものどかな場所。

教室からの距離を考えれば、10分休みは無理でも、早朝と昼休みならゆっくりと本が読めそう。

天気のいい日は、ここで過ごそうかな。


そういえば、ガゼボの周りにある“このバラ”――赤いバラの中でいちばん真紅な色をしていて、これから甘い匂いがする。

生垣の前で香った匂いの正体は、“このバラ”だったのね。

ほかのバラと比べて、甘い匂いがとても強い品種のようだ。

でも、“このバラ”は今まで一度も見たことがない。

『美女と野獣』で出てきたのがきっかけで、バラに興味を持ち、バラの品種や花言葉など調べたことがあるけれど、この品種のバラはどこにもなかった。

これはいったい……――。


興味本位で、そのバラに触れようとした――そのとき。

突然、腕をガッと強くつかまれた。

その勢いで、怖い顔をした男子学生と目が合う。