それから静かに二人の時間を過ごすと、「送って行くから帰ろう」とイザークに言われて執務室を出た。

「あの、ザーク様、忙しいのにお仕事の邪魔をしてすみませんでした」
「いや、大丈夫だよ」
 
 駐屯地の出口までイザークと並んで向かう途中、エレノアが改めて謝罪をする。

「でも、ずっとお屋敷にも帰って来ないから……」
「もしかして、寂しいと思ってくれた?」

 エレノアは心配して言ったことだったが、イザークが顔を輝かせて言うものだから、恥ずかしくなって顔が赤くなる。

 いつの間にか自然に繋がれた手も久しぶりで、エレノアはずっとふわふわとした心地だった。

 先程のキス以降、イザークの気持ちがだだ漏れな気がする。いや、彼は最初からそうだったかもしれない。エレノアが気付かなかっただけで。

「あの、お身体は大丈夫なんですか?」

 イザークの気持ちを意識せざるをえない状況で、エレノアは増々顔が赤くなる。それを誤魔化すため、話題を変えた。

「ああ。今日、エレノアに会えたから元気になった」
「もう!」

 それなのにイザークは甘い言葉をやめない。心臓が保たないのでいい加減にして欲しい、とエレノアが頬を膨らませている時だった。

「お帰りですか?」

 入口に向かうサミュと出会した。