イザークはカーメレン公爵家の長男として生まれ、自身も家を継ぐべく努力してきた。しかし、三歳下の弟、オーガストに「鑑定」の能力と当主としての才があるとわかると、あっさりと弟に跡目を譲ることを決め、騎士団に入団した。イザークが15歳のときである。

 イザークは騎士団で剣の才能を更に磨き、魔物討伐で武功を挙げ、25歳の現在は騎士団長にまで登りつめた。

 美貌と実力を兼ね備えた騎士団長は、多くのご令嬢に言い寄られ、その筆頭であるバーンズ侯爵令嬢には婚約者だと噂を立てられる程だった。

 しかしイザークは、色恋には興味も無く、淡々と騎士としての仕事をこなす日々だった。騎士団内では尊敬されてはいるものの、その厳しさに恐れられていた。にこりともしないその氷の鉄壁に、ご令嬢からは別の意味で人気を博していた。

 その情報はもちろんオーガストに筒抜けで、ジョージにも届いていた。

「あなたは、欲が無さすぎる」

 心配をしていたイザークに、想い人が出来たと聞いた時は、上手くいって欲しいと願ったジョージだった。それが、オーガストの任務に想い人が関わり、イザークとの結婚にまで結びつけたと次期当主から聞いた時は、ジョージは驚きつつも喜びのほうが大きかった。