「王家は今、この聖水について慎重に調べている。簡単には手出し出来ないから、秘密裏に証拠集めをしているところで……」
「ああ、私が証言者になるわけですね」

 そこまで聞いて、やっと理解した。でも……

「私は元孤児です。そんな人間の言葉が証言になるでしょうか?」

 教会の中でも下っ端だったエレノア。とても神官長様たちを糾弾出来る材料になるとは思えない。

「その力がエレノア殿だけしか使えないとしても?」
「へっ?」

 でも、オーガストは意外な事実を口にした。

「聖水を作れるのはエレノア殿だけ。その証拠に、聖水の水の割合が最近では増えている。そして、それを貴方が見分けられることを教会側は知らない」
「それでも私の言う事なんて……」

 なるほど、と思いつつもも、教会という大きな組織ならエレノアの言う事一つくらい捻り潰せそうだと思った。

「それに、貴方は無自覚かもしれないが、付与の力は今は眠っているだけで、まだ大きな力を持っている。そんなことが教会にバレれば……」
「……連れ戻されますね」

 オーガストの言葉に、エレノアはぞくりとした。

(……冗談じゃない!)

 力うんぬん、はよくわからないけど、またわからないままに教会に搾取されるのは嫌だ。

「そこで、教会側の悪事を暴くまで、貴方を保護したい」
「ああ、なるほど、それで結婚ですか……」
「話が色々それたが、やっと説明出来た」
「お疲れ様でした」

 エレノアは、話を終えたオーガストにお辞儀をして、ふと、疑問が浮かぶ。

「いや、だからって何で結婚?!」