フィンレーとオーガストに向き直り、まっすぐにエレノアが答えると、二人は嬉しそうに微笑んでくれた。

「父上も君に会いたがっていたが、何ぶんご多忙でね。君たちの結婚式には出席するだろうから、その時にね」
「国王陛下が?! そんな恐れ多い!!」

 フィンレーの言葉に、まだ王族の一員だと実感が湧かないエレノアは飛び上がる。と同時に首を傾げた。

「ん? けっ、こん、しき??」
「君と俺の結婚式だ」

 困惑するエレノアに、隣のイザークが甘くはにかむ。

「ふえ?! い、今更ですか?! 結婚してるのに?」
「今更じゃない。君は最初、離婚しようと思っていたし」

 驚くエレノアに、イザークは頬を膨らませて言う。その可愛らしい仕草にエレノアはキュンとしつつも困惑する。

「君は俺の愛を受け入れてくれた。結婚式で確かなものにしたい」
「あ、あの……」

 甘い顔のイザークの距離が近い。近すぎる。

「君の全てを一生俺の物にすると言ったろ? 神の前でも誓うよ、エレノア……」
「だから距離感、おかしいですって――」

 甘い言葉を甘い顔で囁くイザークに、エレノアは心臓が耐えきれなくなり叫んだが、イザークの腕の中に捕らわれてしまい、身動きが取れない。

「ほう、これは珍しい物を見せてもらった。オーガストの話だけではにわかに信じられなかったからな」
「義姉上は本当に凄い人ですよ」

 二人のやり取りに、目の前にフィンレーとオーガストがいたことを思い出し、エレノアの顔は余計に赤くなる。

 いつもならここで離れるイザークもエレノアをしっかり留めて離さない。

「ちょ、ザーク様、人前!!」
「結婚式、挙げてくれるよね、エレノア?」
「挙げます、挙げますから――!」

 結婚式を挙げたいって、乙女の言う台詞では?

 エレノアは心の中で突っ込みつつも、イザークに叫んだ。

 目の前の二人の視線が生暖かく、いたたまれなかった。