「オーガスト!」
「兄上、お待たせいたしました!」

 イザークは入って来たオーガストを確認すると、すぐに第一隊に指示を飛ばした。

「全員拘束しろ!」

 それからあっという間に、神官長、グランを始めとする第二隊、神官長や神官たちが第一隊によって取り押さえられた。

「エレノア、遅くなってすまない」
「ザーク様……」

 次々と捕らえたられた者たちが地下室の中央に集められていく中、イザークはエレノアに駆け寄り、騎士服のマントをエレノアの肩にかけた。

 遠慮がちに、でも心配の色を瞳に浮かべてエレノアを気遣うイザークに、エレノアはボロボロと涙をこぼす。

「ザーク様!!」

 思わずイザークの胸の中に飛び込んだエレノアに、イザークも戸惑う。

「無事で……無事で良かった……!」
「……心配かけてすまなかった」

 イザークの胸の中で泣きじゃくるエレノアに、彼も遠慮がちにエレノアを抱き締めた。

(ミモザの香り……ザーク様だ)

 いつもの香りに抱き締められ、エレノアはやっと安堵する。

「こんなことして、どういうつもりだ!」

 部屋の中心に捕らえられた神官長が叫び、エレノアもそちらに目をやる。

 この部屋をあっという間に第一隊が制圧し、オーガストはその中心に立っていた。

「これは由々しき問題ですぞ、宰相補佐どの? 王家が教会を侵すなど……」
「先に領域を破ったのはそちらです」
「何だと?!」

 縛られながらも抗議する神官長に、オーガストは淡々と答える。

「現国王陛下の亡き弟君、王弟殿下のご息女を長年拐かし、虐げ、二度も誘拐した罪は重いですよ?」
「王弟殿下のご息女だと?! 一体誰のことを……まさか?」

 オーガストと神官長の視線がエレノアへと集まる。

「へ?!」

 急に話の中心にされ、エレノアは目を丸くする。

「エレノア様は王弟殿下とスミス伯爵令嬢のご息女。彼女は立派な証人です」
「リリアンめ……、裏切りだけではなく、まさか王家と通じていたとは……」

 オーガストの言葉に、神官長はその場に崩れ落ちた。

 その場にいた全員が驚いた表情でエレノアを見つめた。

(ちょっと、ちょっと待って! どういうことなの?!)

 一番驚いているのはエレノア本人だった。