「そっか、エレノアはやっと幸せを掴んでたんだね。でも……」

 エレノアの話を嬉しそうに聞いた後、モナは表情を曇らせた。

「ね、他に連れられた子はいるの?」

 そんなモナの気をまぎらわすようにエレノアが話題を変えた。

「う、うん。あと一人、ラミって覚えてる? 今は騎士団の治療棟に連れ出されているよ」
「治療棟……?」

 治療棟は第二隊が人を寄せ付けず、貴族だけを治療していた。下位の聖女が貴族を治療することなんてなかった。

「ラミは治癒術が得意で、スミス領でもお医者さんの手伝いをしていたんだよ」
「そうなんだ……」

 聖女によって得意なことは違う。エレノアも口にする物に力を与えてこそ、治癒の力を発揮する。水魔法が使えたので、水に付与してみた所、聖水が出来たのだ。

 エミリアは外部から見えない魔法をあの時温室にかかっていると言った。もしかしたら、彼女はそういう魔法が使えるのかもしれない。

(ラミが治癒を使う所を見えないようにして、上位の聖女たちの功績にする……。教会の考えそうなことだわ)

 エレノアは今までの仕打ちを考えると、ラミの力を教会が搾取しているという考えに至るのは早かった。

 ガタン!と音がしたかと思うと、地下室の扉が開く。

「ラミ!!」

 入口から投げられるようにして部屋に放り出された少女にモナが駆け寄る。

「そいつは使えなくなった。お前が代わりに来い」
「エレノア!」

 エレノアは物のように第二隊の騎士に腕を捕まれ、引っ張られる。

「それとも、お前が代わりになるか?」

 ジロリと騎士と一緒にいた神官がモナを見据えれば、モナはラミを抱えたまま身をすくめた。

「私が行けば良いでしょう!」

 エレノアが神官を睨んだその時だった。

「あら、本当にいる」

 第二隊隊長のグランを引き連れてやって来たのは、エミリアだった。