「あ…」

体育の終わり、玄関へ急ごうとしていたときに私の視界に入ってきた、その人は。
真冬なのにジャージも着ずに体育倉庫へ駆けていく、その人は。
紛れもない、彼だった。

桜木(さくらぎ)先輩っ…」

部活で焼けた肌に爽やかな笑顔がよく似合う、私の、好きな人。

ぽつりとつぶやいたその声は、誰の耳に届くこともなく、澄んだ冬の青空に消えていった。