目が覚めると、室内はすでに明るくなり始めていた。
 ……ここは、総司(そうじ)さんの家。
 寝起きのぼんやりした頭で考えて、ごろりと体を横に向ける。
 カーテンの隙間から漏れる光が、同じベッドの上、隣で眠る彼の肩あたりに差していた。掛け布団の内側にある体は、私も彼も素肌のまま。
 そのことについ数時間前の濃密な触れ合いを思い出して、私は人知れず頬を熱くした。彼と夜をともにするのはまだ数回目で、こんな朝に未だに慣れない。
 ゆうべもたくさん彼のいいように貪られたから、体のあちこちがだるいし喉もいがらっぽい。けれどとても満たされた気持ちで、私は目の前にある寝顔を見つめた。

「……総司さん」

 小さく、呼びかけてみる。すぅすぅと穏やかな寝息をたてている彼は、まだ目覚める気配はない。
 起きているときは凛々しいその顔が、眠っている今は少し幼く見える。いとおしさにたまらなくなった私は小さく微笑んで軽く伸び上がり、ちゅ、とその唇に自分のそれを重ねた。
 そうしてすぐ顔を離そうとした、のに。突然彼の手が動いて私の後頭部に回ったかと思うと、また引き寄せられる。
 驚く私を他所にたっぷりと深くていやらしいキスをしたのち、ようやく解放してくれた。

「総司さん……っ起きてたん、ですか……っ?!」

 息も絶え絶えに至近距離の人物を睨みつけて言えば、当の本人はというとぺろりと自分の唇を舐めてから悪びれなく答える。

「一体どんなふうに襲ってくれるのかと思えば……とんだお子ちゃまなちゅーですねぇ、さなえチャン?」
「う、うるさいです……!」

 こちらが悔しさのあまり睨んでいるというのに、まったく(こた)える様子がない。経験値に、差がありすぎる!

「ほら、どうせ今日は休みなんだから、もう少し寝るぞ」

 総司さんがそう言ったかと思うと、今度はぽすんと胸もとへ引き寄せられる。
 また、からかって遊ばれてしまった……。
 むうっと唇を尖らせながら、それでも総司さんの胸の中は心地良くて、素直に擦り寄る。
 少し目線を上げると、自分の体とは全然違う、でっぱった喉仏が見えた。それから、さらけ出された首筋も。
 うず、と私の中に、どうにか総司さんを動揺させたいという衝動が芽生える。
 だっていつも、私ばかりが食べられているんだもの。総司さんも、少しは私の気持ちになってくれればいい。
 飼い慣らされた小動物だって、たまには飼い主に噛みつくのだ。そう頭の中で考えて、私はあーんと口を開けた。