大城くんが後ろを向かなくても声をかけた女の人はこっちに近寄ってくる。



「ねぇ〜っ。りんだよねっ?私だよわたし!
かおり!」


その声に導かれるように大城くんは女の人の方を向いた。


「か、おり……………。」


大城くんは見たことのない表情をしていた。
傷ついたような怖がった顔をして女の人を見つめてる。


「んー。元気?
あ、何この子彼女?可愛い顔してるねー。
この子タイプなんだ?
凛を好きだなんてもの好きだねー。」


何この人。かおりさんって名前なの?
悪意のあるかのような笑い方をする。


それに大城くんの様子が変。

ここはもう大城くんを連れて離れた方が良さそうだ。


「大城「ねぇりん?私今フリーよ?
ほらぁ、あの時とは違うからさぁ、りんだけを愛せるの。だからほらおいでまた私のもとに。

あ〜いしてるよ。」


大城くんの耳元でそう呟くと

ピクリと反応して腕を広げてる人のところに行こうとした。



大城くん……………?


今にもかおりさん元へ着いてしまう大城くんは
何かに吸い込まれるような親から離れて不安で仕方がない幼子みたいな泣きそうな目をしてる。


咄嗟に


「大城くんっ。」


腕を掴んだ。


「大丈夫?」


大城くんの顔を覗き込んでそう言うと
ハッとしたようにかおりさんから離れる。


「こう、らんちゃん………。」

「うん………。」


あまりにも弱々しい大城くんに大丈夫だよって安心させるために優しく微笑んだ。


すると私の目を見てホッとしたようか顔をして。


「りぃ〜んっ!ほらぁ。私他の男の子のとこ行っちゃうよ?りんがちゃんと捕まえとかないとっ。」

「…………お好きにどーぞ。
さんざん俺のこと騙しといて。」



さっきのような様子は消え去り、凍るような目をしてかおりさんを睨め付けてる。