真面目な委員長ちゃんはイケメンチャラ男に翻弄される。



「変装カフェでーす!
良かったら寄って行ってください〜。」



文化祭はかなり賑わっていた。

席は満席で私や依や大城くん。他の接客の子達はみんな対応に追われていた。

ある変装の中からどの変装がいいのかをお客様に指定してもらって振る舞う。

食べ物や飲み物はおすすめは変装にあった食べ物にしている。

例えばシンデレラだったらガラスの靴にアイスクリームを詰めてトッピングするとか

白雪姫だったら毒リンゴパフェを出すとか

ほとんどの人がおすすめを注文していっている。
私が今接客しているのは高校生の男子だった。


「お待たせしました。ご主人様っ。
こちら甘々カフェラテです。」



メイドの格好をしながら振る舞うのはだいぶ恥ずかしい…………。

だけど売り上げのために真面目に笑顔で接客をする。


「この甘々カフェラテ限定でお客様の目の前でハートをラテアートすることができますがどうされますか?」

「ハート?じゃあお願いします。

あの、ちなみになんですが連絡先とかって。」

崩れないように慎重にハートをゆっくり書いて

「ごめんなさい。そう言うのはお断りしているんです。
ではご主人様、楽しんでいってくださいね!」


メイドらしくスカートの端を持ち上げて引っ込む。

今みたいに連絡先を聞かれることは多くある。
けれどそんなことはしないように決まってるし丁重にお断りする。

だいたいの人はさすがに学校の文化祭だからしつこく言い寄ったりしない。
だから少しだけ気が楽。



それの繰り返しだ。



やっぱり男子は女の子の変装を指定して女子は男子の変装を指定することがほとんどだ。

まあ、時々家族や友人が同性同士でも接客を指定することはあるけれど。


そんなふうに順調に進んで私の当番も残り20分ぐらいになった時、また指名されて行く。



「いらっしゃいませご主人様。
こちらがメニューになります。
おすすめは甘々カフェラテです。」

「キミ、ちょーかわいいね。
じゃあ甘々カフェラテにしようかな?メイドちゃん?」


大学生ぐらいの男性で少し目線がいやらしくて嫌だと思ったけど一応来てくれたお客様なのでここは穏やかに


「かしこまりました。
ご主人様の目の前でハートをラテアートすることが出来ますがどうなさいますか?」

「じゃあしてもらおかな。」


頷いたのを確認してハートを丁寧に書いてお決まりのセリフを口にして立ち去ろうとするけど


「ねぇ、キミ。この後一緒に回らない?」

「ごめんなさい。
そんなことはできない決まりになっておりまして。」

いつも通り断ると相手はイラっとしたように笑って


「いーじゃん?ご主人様からのお願いだよ?」


今回は引き下がってくれなかった。


でも決まりは決まり。
お客様だなんて関係ない。


「申し訳ありません。無理です。」


少し強めに言うと苛立ったように手首を掴んできた。


「ちょ、やめてくだ「お客様。おやめください。」



振り払おうとすると聞き慣れた声が聞こえてホッと肩の力が抜ける。


「はぁ?なん───── 」


大城くんに言われてもその男性は苛立っていて、その男性の耳元でボソッと何かを呟いた瞬間男性は顔を引き攣られて去って行った。




何を言ったんだろう。


首を傾げていると、