Side鈴


「きっと、鈴美は俺を恨んでる。
だから「そんなことないっ。」


そんなことないんだよ。
そんなことないのお父さん。


鼻の奥がツンっと痛んで涙がこぼれそうになる。




お母さんはお母さんはね─────



「お父さんのこと幸せになってほしいって思ってるんだよっ?
恨んでなんかない。」


だから、もう一度



「一から2人で前に進もう?」



あの日、一緒の家で暮らすようになってからずっとお父さんを避けてきた。


だけどやっぱりどこか寂しかった。


自分のことは自分で出来るし、なんなら1人暮らしでもしっかりやっていけたかもしれないけど、


学校から帰ってきて誰もいないっていうのが寂しかった。苦しかった。


「…………いいのか?」


辛そうに顔を歪めて聞いてくる。


「俺は父親失格だそ。
今更また鈴と普通に接するなんて鈴は嫌じゃないのか。こんな父と一緒で。」


そんなふうに言わないでよ。

だって


「私が一緒に暮らしたいんだよ?


でももしも悪いって思ってるんだったら
もう女の人の遊ぶなんてことはしないで。
お父さんが傷つくのは嫌だよ。
仕事もちゃんと見つけようよ。私も一緒に頑張る。」


「っ。さすが美鈴の娘だ。
芯が強くて真っ直ぐなところはそっくりだ。」



お互い鼻を啜って笑いあった。



これでいいんだよね。
ありがとうお母さん。

心の中でお礼を言った。