「うん。」
宵の目を真っ直ぐに見て頷く。
言ってほしい。
全部聞くから。
向き合うから。
「───── さみし、かった。」
「うん。」
「2人が亡くなった時、心が押し潰されそうになるほど悲しくて何もできなくて。
何をしても日常が灰色で色がなかった。」
俺もそうだった。
同じ立場にいたから気持ちは痛いほど分かる。
「でもっ、でもね…………?
私にはお兄ちゃんがいた。
悲しみを感じない日はなかったけど、お兄ちゃんがいればどうにでもなるって思ってた。だって、子供の頃からずっとお兄ちゃんのこと大好きだったもん。
泣いたら1番に駆けつけてくれるし。
物を失くなったら一緒に探してくれるし。
困ったことがあればなんでも助けてくれる。
自慢の兄だった。
そんなお兄ちゃんがお母さんとお父さんが亡くなった時、
いつも私に弱みを見せないでかっこいいお兄ちゃんが死んだような顔しててさ。
お兄ちゃんの弱さを初めて目の当たりにして
次は私がお兄ちゃんを助ける番だってそう思ったんだ。
けど上手くいかなくて………。
お兄ちゃんにそんなふうにされるの初めてでショックと同時に世界でたったひとりぼっちになったような感覚になった。
でも、私と同じくらい
お兄ちゃんも悲しかったんだよね。
潰れそうだったんだよね。
苦しかったんだよね。
気持ちは分かるから悲しかったけど気にしてない。」
宵……………。
涙が頬を伝るのを感じた。
「私は辛くてたまらなくてもう生きてる意味もわからなくなった時、
とっても優しい人と出会ったんだ。
お母さんとお父さん思い出して泣く時もあるよ。
だけど私は大丈夫。支えてくれる支え合える人と出会えたから。
ただお兄ちゃんがいない。
それだけが寂しかった。
そしてね、お兄ちゃんがよく女の人と一緒にいるところを何度も見たんだけどお兄ちゃん、
全然幸せそうじゃなかったから………っ。」
どうでもいいただ欲望を満たすだけで女の子と遊んでる俺を見て宵はどんな気持ちだったんだろう。
そう思うと前の自分を殴りたくなっていく。
宵は辛そうに顔を歪めて泣いている。
「お兄ちゃんは幸せそうじゃないのに私だけいいのかなって、幸せでいいのかな。ってずっとずっと思ってた。
それだけが気になって、でもあの日から時間が経つにつれてどんな顔してお兄ちゃんと話せばいいか分かんなかった。」
宵はサッと涙を拭って、ふふっと笑って言った。
「お兄ちゃんは、
お兄ちゃんはできたの?今、いる?そんな支えてくれる人。支え合える人。」
宵は確信したような安心した表情で言ってきた。
思い浮かんだ女の子が1人。
「いる。」
「そっか。」
向き合ってくれる人。
こんな俺でも大丈夫って背中押してくれる人。
俺のために怒ってくれる真っ直ぐな1人の女の子が。
…………まぁ、想いが合わさるのはまだまだこれからだけど。
「宵。本当にごめん。兄失格だけど最低なやつだけど。
もう一度宵の兄になってもいい?
もう寂しさなんて感じさせない。
父さんと母さんの分まで頑張るから。」
胸張って宵の兄だって言えるように。
少しだけ、許してもらえないんじゃないかって、怖くて声が震えそうになったけど。
「もちろんだよ。
ありがとうお兄ちゃん。」
そんな心配は杞憂だった。
柔らかな笑顔でそう言ってくれて、
ようやくホッと肩の力が抜けた。
その時─────
「あの女の人だよね。
なかなか手強いと思うけどお兄ちゃん頑張ってね。」
「っは。」
俺の耳元でボソッとそう呟いてお茶目に笑う妹。
え。なんで。
戸惑いながらもまた妹と普通に話せるのを喜ばしく思った。
そして、俺はある決意をした。
心の中は今までにないくらいスッキリ晴れ渡っていた。
宵の目を真っ直ぐに見て頷く。
言ってほしい。
全部聞くから。
向き合うから。
「───── さみし、かった。」
「うん。」
「2人が亡くなった時、心が押し潰されそうになるほど悲しくて何もできなくて。
何をしても日常が灰色で色がなかった。」
俺もそうだった。
同じ立場にいたから気持ちは痛いほど分かる。
「でもっ、でもね…………?
私にはお兄ちゃんがいた。
悲しみを感じない日はなかったけど、お兄ちゃんがいればどうにでもなるって思ってた。だって、子供の頃からずっとお兄ちゃんのこと大好きだったもん。
泣いたら1番に駆けつけてくれるし。
物を失くなったら一緒に探してくれるし。
困ったことがあればなんでも助けてくれる。
自慢の兄だった。
そんなお兄ちゃんがお母さんとお父さんが亡くなった時、
いつも私に弱みを見せないでかっこいいお兄ちゃんが死んだような顔しててさ。
お兄ちゃんの弱さを初めて目の当たりにして
次は私がお兄ちゃんを助ける番だってそう思ったんだ。
けど上手くいかなくて………。
お兄ちゃんにそんなふうにされるの初めてでショックと同時に世界でたったひとりぼっちになったような感覚になった。
でも、私と同じくらい
お兄ちゃんも悲しかったんだよね。
潰れそうだったんだよね。
苦しかったんだよね。
気持ちは分かるから悲しかったけど気にしてない。」
宵……………。
涙が頬を伝るのを感じた。
「私は辛くてたまらなくてもう生きてる意味もわからなくなった時、
とっても優しい人と出会ったんだ。
お母さんとお父さん思い出して泣く時もあるよ。
だけど私は大丈夫。支えてくれる支え合える人と出会えたから。
ただお兄ちゃんがいない。
それだけが寂しかった。
そしてね、お兄ちゃんがよく女の人と一緒にいるところを何度も見たんだけどお兄ちゃん、
全然幸せそうじゃなかったから………っ。」
どうでもいいただ欲望を満たすだけで女の子と遊んでる俺を見て宵はどんな気持ちだったんだろう。
そう思うと前の自分を殴りたくなっていく。
宵は辛そうに顔を歪めて泣いている。
「お兄ちゃんは幸せそうじゃないのに私だけいいのかなって、幸せでいいのかな。ってずっとずっと思ってた。
それだけが気になって、でもあの日から時間が経つにつれてどんな顔してお兄ちゃんと話せばいいか分かんなかった。」
宵はサッと涙を拭って、ふふっと笑って言った。
「お兄ちゃんは、
お兄ちゃんはできたの?今、いる?そんな支えてくれる人。支え合える人。」
宵は確信したような安心した表情で言ってきた。
思い浮かんだ女の子が1人。
「いる。」
「そっか。」
向き合ってくれる人。
こんな俺でも大丈夫って背中押してくれる人。
俺のために怒ってくれる真っ直ぐな1人の女の子が。
…………まぁ、想いが合わさるのはまだまだこれからだけど。
「宵。本当にごめん。兄失格だけど最低なやつだけど。
もう一度宵の兄になってもいい?
もう寂しさなんて感じさせない。
父さんと母さんの分まで頑張るから。」
胸張って宵の兄だって言えるように。
少しだけ、許してもらえないんじゃないかって、怖くて声が震えそうになったけど。
「もちろんだよ。
ありがとうお兄ちゃん。」
そんな心配は杞憂だった。
柔らかな笑顔でそう言ってくれて、
ようやくホッと肩の力が抜けた。
その時─────
「あの女の人だよね。
なかなか手強いと思うけどお兄ちゃん頑張ってね。」
「っは。」
俺の耳元でボソッとそう呟いてお茶目に笑う妹。
え。なんで。
戸惑いながらもまた妹と普通に話せるのを喜ばしく思った。
そして、俺はある決意をした。
心の中は今までにないくらいスッキリ晴れ渡っていた。

