ムラがあるどころじゃない。生え際は明るい金髪なのにえり足はほとんど色が抜けてなくて、前から見ると金髪、後ろから見ると黒髪といった有様。きれいに色が抜けてるように見えてる部分も髪をかき上げると中が黒いし、金髪というかオレンジっぽくなってるところも多くて、やっちまった感。

 なのに、ドライヤーを取り出して鼻歌まじりで乾かしている。

「ピリピリしてたのは大丈夫?」

「おう、洗ったら治った!」

 皮膚が赤くなったり変になったところもないみたいだし、僕としてはそれでOKだ。

「でも、コレはコレでアリだな。オンリーワンにしてナンバーワンのヘアカラー。これぞ、男の中の男!」

 僕は、伊月くんのこういうところが大好きだった。

「よし、完了~」

 ドライヤーを乾かし終えた伊月くんが、鏡から僕の方にくるっと振り返る。

「じゃ、そろそろいつものいいか?」

 パンイチの伊月くんが、僕に迫ってくる。

「もう月一しかこうして会えねえんだろ? 飲み溜めするから、貧血なったらごめんな」

 僕の肩に手を置いて、伊月くんが口を開ける。僕はそれを見て、少し首を傾げて首筋を伊月くんにさらす。

「僕の都合だし、いいよ」

 伊月くんの口が、牙が、僕の首筋に触れる。

 プツリと、皮膚に穴が開く感触。不思議と痛みはない。きっと酔っぱらってるときってこんな感じなんだろうなっている、ふわふわした感覚が首筋から広がっていく。

 耳元で、伊月くんが僕の血を飲んで喉を鳴らす。

 僕だけが知っている伊月くんの秘密――伊月くんは吸血鬼だった。