「オンユアマーク!」

 パアンッ

 ピストルの音で、走者が一斉にスタートを切った。

 でも、うちのチームは少し出遅れて、バトンパスの時点で九クラス中八位、二走者目の子が抜かれ、最下位になってしまった。

 ああ、もうダメかぁ……。
 
 私がそう思った時、はるきがテークオーバーゾーンを走り始めた。

 そして、走ってきた二走の子からバトンを受け取った瞬間、風のように走り出した。

 一人、二人……すごい、三人も抜いた!

 大歓声の中、四人目を抜こうか……というその時。

 急カーブで足が絡まったのか、はるきの体が大きく傾いた。

 抜かれかけていたチームの安堵の声とうちのチームの悲鳴とが混ざり合う中、はるきは地面に倒れこむ。

 うわぁ、かわいそうに。注目されていた分、余計……。

 ……でも、倒れこんだ瞬間、はるきは両手で地面を押して、また立ち上がって走り始めた。

「……!」

 そのわずかな時間で追い抜いた三人から抜かれてうちのチームは再び最下位に。

 それでもはるきは必死に食らいついて、最後に一人抜いて、バトンを次の走者に託した。

 さっきはもうダメだって、かわいそうだって思っちゃってごめんね、はるき。

 はるきが頑張った分、私も頑張らないとだよ!

 私は走ってくる人を見てタイミングを見計らい、スタートを切った。

 バトンが手に触れた瞬間、ぎゅっと握って走りだす!

 もう、一位にはなれない、なんていう弱気なことは考えない。

 ただ、目の前にいる人を追い抜くことだけを考えて……!