「俺、奏音のこともっと知りたくなった。だから、俺と恋しない?」

「いやいや!あなた、なに言ってるか分かってます?」

「分かってるよ。 奏音、俺と最高の恋しな」

 えっと……。恋愛ってそんなに簡単に出来るものではないと、私は思っている。
 
「恋をするって……私、そんな気はありません」

「奏音が恋をしたくないのはさ、失敗するのが怖いからだろ?」

「……そんなこと、ないです」

 この人の言うとおりだ。私は恋愛で躓いたり、落ち込んだり、泣いたり、怒ったり、嫉妬したくないんだ。
 だから今まで、恋をしてこなかった。恋愛に興味がないフリをしていたんだと思う。

「奏音の顔に書いてあるよ。俺と恋がしてみたいって」

「はあっ? そんな訳ないですっ」
 
 この人は、一体何なのだろうか。よく分からない。
 私をからかってるだけなのか、冗談なのかも分からない。

「じゃあさ……なんでそんなに顔赤いの?」

「えっ……?」

 百合原さんに見つめられてしまったことで、自分でも意識してないのに顔が赤くなっているということだろうか。

「奏音。俺と恋、してみる?」

「……それは冗談、ですか?」

「冗談なんか言わないよ。 俺は本気だからね」