先輩の『かわいい』の意味

「すまないな、白木。迷惑かけて。あいつは小学校から一緒だが、いつもああいうノリなんだ」
「いえ! 全然迷惑では!」

 むしろあの先輩、私の気持ちに気づいて応援までしてくれたしね。
 あわてて首をプルプルと振ってから、私は先輩に聞こえないくらいの小さな声でつぶやく。

「……先輩にとって、私はやっぱりただのかわいい後輩にすぎないんですね」

「ん?」

「いっいえっ! 気にしないでください!」

 ヤバい、まさかこのうるさい中聞こえちゃうなんて。

『選手のみなさん、および、借り人のみなさんは、退場門から退場してください』

 ちょうどそこでアナウンスが入った。

「い、行きましょう、先輩!」

 私はそう声をかけてさっきの言葉をなかったことにしながら、先輩と一緒に退場する。

 退場門を抜けてしばらく歩いたところで、先輩は突然、足を止めた。