それもそのはず、こんなにも、あまりに理想ドンピシャの女性と僕なんかが結婚できたのは、彼女に何か訳でもあったのでは…?と。
「嫌いになんてならないよ…話してごらん」
 僕は、彼女にあまり過激な過去がないことを内心祈りつつ、そっと促した。
「あなた…去年の縁日のこと、覚えてる?」
「縁日?地元の夏祭りのこと?」
 兄夫婦に、まだ幼い甥と姪を夏祭りに連れていってやってくれと言われ、子供たちは、カラーひよこ見て、欲しい!と騒いだ。
 僕としては、それはどうかな…と思った。そもそも、今時カラーひよこなんて、動物虐待だろう。
 かつて僕も、子供の頃の夏祭りで、カラーひよこを一羽だけ買って帰った。
 しかし、色鮮やかで可愛かったひよこは、翌日にはもう死んでおり、泣き乍ら、庭にひよこの墓を作ったものだ。
 その一方で、友人の買ったひよこは、元気な雄鶏に成長したものの、凶暴すぎて愛玩動物にはならず、結局、その雄鶏は焼き鳥にされ、友人は今でも焼き鳥が食べられないという。
 そんな過去があったから、甥姪にせがまれても、悩むのも無理はないだろう。
 それに、生き物を買って帰れば、兄夫婦は怒るに決まっている。
 ところが、あまりにも甥と姪がしつこいので、僕が引き取るのを覚悟で、渋々、一羽だけ買うことにした。