高校3年生に進級して最初のホームルーム。

「よーし、今年一年間の委員会を決めるぞ。早い者勝ちだから各自立候補するように」

黒板には色々な委員会の名前が担任によって書かれている。

これ、毎年何の委員会に入ろうか悩むんだよね。

去年までは麻里と一緒に保健委員だった。

養護教諭の作成した保健だよりを年に数回コピーしたり各教室に配布したりするだけだから、保健委員会はとっても楽なんだよね。

今年も麻里と保健委員になれると思っていたのに。

定員2人のところに私と麻里の他に2人の男の子が立候補してきて、ジャンケンで決めることになってしまって。

私がジャンケンに負けて麻里と一緒に保健委員になれないんじゃないかって嫌な予感がしたんだけど、4人でジャンケンをしたら嫌な予感は予想外の嫌な結果になってしまった。

ジャンケンに勝ったのは1人の男の子と、私。

斗真以外の男の子ってあまり話したことないし、少し苦手なんだよね。

それに麻里と別々になってしまうのも心細いから保健委員は辞退して麻里と他の委員会にしようと思ったのに。

ジャンケンの勝負がついた瞬間に麻里ともう一人の男の子は残っている委員会の中で仕事が楽な委員会のところにさっさと名前を書きに行ってしまったから、保健委員を辞退しようと思ったのにもう遅かった。

麻里は風紀委員会のところに名前を書き、私に向かって

「陽菜、こっちの委員も仕事量少ないからギリセーフだよ」

そう言って親指を立てて見せた。

「よーし。これで全員名前書いたな。じゃ、このメンバーで一年間よろしく!」

担任の声を合図にホームルームは終了。

クラス全員の名前が書かれた黒板の中に斗真の名前を無意識に探してしまう。

あっ、やっぱり今年も体育委員に斗真の名前がある。

体育の時の斗真はいつも嬉しそうにしていて、運動神経がとてもいいと思う。

斗真が体育委員を選ぶのは当然なんだろうな。

斗真は中学生の時、サッカー部だったと麻里から聞いたことがある。

それなのに高校ではサッカー部に入らず、他の部活もしていない。

以前どうしてサッカーを続けないのか聞いてみたことがあるんだけど、

『俺は部活とかもういいんだよ。運動したいときはジョギングできるしジムだって行ける』

運動するの大好きなのになんだかもったいないねって斗真に言ったら、

『なに? 陽菜は俺のサッカー見たいの? まじ惚れるよ。俺、サッカーしてたらめっちゃモテるからね』

そんな風に冗談でしか返してくれないから、サッカーを辞めた本当の理由は聞けなかった。

普段はうるさいくらい元気で活発な斗真だけど、いつも斗真のことを目で追ってしまうから、時々淋しそうな表情をするのも知っているの。

でも淋しそうな表情をするのはほんの一瞬で、次の瞬間には明るく振舞っているからきっと誰も気付いていないと思う。

それがどうしてなのか知りたいし悩み事があるなら聞いてあげたいけど、それは私の役目じゃないから。

麻里がいるから斗真が私と仲良くしてくれているって、分かってる。

麻里はきっと斗真のことが好き。

斗真はきっと麻里のことが好き。

鈍感な私でもこの2人と2年間一緒に過ごしてきて一番近くにいたんだから、分かってる。

私はこれ以上斗真に対して欲張りになってはいけないんだ。