はぁぁ、ラインどうしよう。

さっきから守谷くんにラインしなきゃならない憂鬱で、ため息ばかり出てしまう。

学校でラインすると、きっと守谷くんは友達に私のラインを見せるだろうと思って、夜までラインするのは止めたんだけど。

日曜日が明後日になった今、早く連絡を取らなければいけないよね。

あの時、斗真が良かれと思って遊園地に一緒に行くと守谷くんに言ってくれたのはとても嬉しかった。

斗真は麻里と遊園地に行けるのが嬉しいんだろうけど。

今回は私と守谷くんが楽しむのじゃなくて、斗真と麻里をくっつけることに専念しよう。

それが私の大義名分だって思えば守谷くんにラインすることなんて、なんてことないよね。

私は意を決してルーズリーフに書いてある守谷くんのラインを友達登録した。

≪守谷くん、羽瀬です。 よろしくお願いします≫

最初の一言はこれでいいかな。

文字は打ったけど、送信ボタンがなかなか押せない。

はぁぁ、どうしよう。

打った文字をいったん消してもう一度送る言葉を考えようと消去マークを押したつもりが、あろうことか送信ボタンを押してしまった。

きゃああ! 急いで送信取り消ししようと操作していたら既読がついてしまって。

その数秒後には守谷くんからメッセージが返ってきた。

≪羽瀬さん、ラインくれるの遅い。なんなの、俺のことじらしてんの?≫

えっ? 違うから! 全然そんなんじゃないから!

≪連絡遅くてごめんなさい。 守谷くんにラインするの迷ってました≫

私は正直にラインを迷っていたことを打ち明けた。

≪そうだよな、俺をじらすなんてそんな技持ち合わせてないよな≫

≪はい。技なんかじゃないです≫

≪ラインでも真面目だな、羽瀬さん≫

真面目とか、そんなことじゃないの。

守谷くんのことをまだ良く知らないし、私が送ったラインもみんなに見せるかも知れないって思うと言葉は崩せないよ。

≪あの。日曜日はどうしたらいいですか?≫

≪あー、それね。羽瀬さんってどこら辺に住んでんの? 最寄りどこ?≫

え、家の場所を言わなきゃだめなの?

≪最寄り駅は・・・内緒で≫

≪は? 別に駅くらい教えてくれてもよくね? なに警戒してんだよ≫

≪あの。遊園地で待ち合わせしませんか? 時間だけ決めていただいても≫

≪一応さ、俺が誘ったんだから迎えに行くって言ってんの。早く最寄り教えてよ≫

むっ、迎えに来るって!! 無理だよそんなの。

うちの最寄駅から一緒に遊園地まで行くなんて、会話が続かないし緊張するよ。

≪迎えは大丈夫です≫

≪いいから早く、最寄り駅言え!≫

守谷くん強引じゃない? ちょっと怖い。

なんか会話が終わらなそうだから家からの最寄り駅を教えるしかなさそうだな。

≪水の杜駅です≫

≪了解! じゃ、駅に10時な≫

守谷くんは本当に迎えに来るのだろうか。

もっとチャラい人だと思っていたからなんだか意外だな。

≪はい、わかりました。あと質問なんですけど、どうして私なんでしょうか≫

どうして守谷くんは私を遊園地に誘ったのか知りたかった。

全部派手なグループ内での賭け事として私を誘ったのだとしたらショックだし。

既読は付いたけど、それっきり守谷くんから返事は来なかったし、これ以上は私も守谷くんにラインしなかった。