「じゃあ、こうしよう」
笹良霞の提案は、いつもろくでもない。
「俺は杏ちゃんを惚れさせたら勝ち。杏ちゃんは、俺を惚れさせたら勝ち」
…戦意喪失。
最初から、そう。
ゲームとかいらないよ、それ。
あたしの負け確定だし、真面目に聞くんじゃなかった。
「簡単でしょ?」
…どこが?
どんな手を使ってでも勝ちたかったよ、そんなの。
だけど、それを許してくれなかったのはかすみくんだ。
…ずるいね。
あたしが勝てないって分かってて。
「かすみくん」
そんな勝負する前に。
あたしから終わらせよう、ぜんぶ。
「好きだったよ、かすみくんのこと、隅から隅まで」
泣き出しそうな胸を押さえて、涙腺をキュッと結ぶ。
「だから、もうおしまいなの。…かすみくんのこと忘れさせて」
最後に、なにしてもいいから。