【短編】保健室で甘いコト。






「もっかい俺を好きにならない?」




心を見透かすように、言われたセリフ。
二度とゴメンだ、って思うのに、簡単に心が揺れそうになる。




だって…。
酷いことをされたって、一番に好きだった人だから。





「なら、ない…」


「あは。そうだよねー」





全然惜しくなさそう。
またからかわれた…って、絶望。




少しは、あたしのこと意識してくれたかな。




かすみくんの気を…ひけたかな。





「じゃあさ、ゲームしよう、杏ちゃん」


「……ゲーム?」


「そ。俺は杏ちゃんを惚れさせたら勝ち。杏ちゃんは俺に惚れたら負け」


「…それ、あたしが勝つ方法ないじゃん」





つまり、かすみくんが勝つか、あたしが負けるかの勝負ってことでしょ。
そんなのゲームでもなんでもない、一方的ないじめだよ。





「いーじゃん、やろうよ」


「……やんないし」


「つまんねーの」




つまんなくていいよ。
もう、かすみくんに振り回されたくない。