【短編】保健室で甘いコト。






馬乗りになられたまま名前を呼ばれて、息が詰まりそうなほどドキドキするあたし。
それを差し置いて、かすみくんは目を細めた。





「俺のことなんも分かってないじゃん」


「……」


「分かろうとも、しないじゃん」





変だよ。
かすみくんがそんな風に悲しそうな顔をするのは、変だよ。




泣きたいのはあたしのほう…。
かすみくんに振り回されてるのは、いつだってあたしのほう。





「かすみくんだって……あたしのこと分かってないよ」


「そうかな。…俺は、分かってるつもりだったんだけどな。いつも見てるし」




いつも……って、なにを?



混乱するあたしの頭を優しく撫でて、心地よい低音で呟いた。





「そう、いつも見てるんだよ…俺、杏ちゃんのこと」





言いながら、そっと額にキスを落とした。



口でも良かったのに、とか思っちゃうあたり。
あたしってなんにも学習してない。



……かすみくんのこと好きだったときと、なんにも変わってない。