馬乗りになられたまま名前を呼ばれて、息が詰まりそうなほどドキドキするあたし。
それを差し置いて、かすみくんは目を細めた。
「俺のことなんも分かってないじゃん」
「……」
「分かろうとも、しないじゃん」
変だよ。
かすみくんがそんな風に悲しそうな顔をするのは、変だよ。
泣きたいのはあたしのほう…。
かすみくんに振り回されてるのは、いつだってあたしのほう。
「かすみくんだって……あたしのこと分かってないよ」
「そうかな。…俺は、分かってるつもりだったんだけどな。いつも見てるし」
いつも……って、なにを?
混乱するあたしの頭を優しく撫でて、心地よい低音で呟いた。
「そう、いつも見てるんだよ…俺、杏ちゃんのこと」
言いながら、そっと額にキスを落とした。
口でも良かったのに、とか思っちゃうあたり。
あたしってなんにも学習してない。
……かすみくんのこと好きだったときと、なんにも変わってない。



