【短編】保健室で甘いコト。





誰にでもこういうことできるくせに。
あたしじゃなくてもいいじゃん。



なんで付きまとうの?
放課後くらい自由にさせて。
いつも教室で嫌というほど見てるんだから。





「かすみく……っ」


「しー…」




かすみくんの人差し指があたしのくちびるに触れる。
直後、保健室のドアがガタガタと揺らされる音。





「あれ? 保健室閉まってる」


「なんだよー、保健室の天使見たかったのに」




すぐにふたりの男子の声が聞こえて、保健室が閉まってることを知ると足音が遠ざかっていく。





「…保健室の天使、ねぇ」





小さく呟いたかすみくんの言葉。
あたしは過剰に反応する。




「どこが天使なんだか」


「っ……え?」




かすみくんがそんなことを言うと思わなくて、驚いた。




「知ってるよ。甘野杏は、厄介な小悪魔。……っていうか、悪魔」


「……どういう、こと?」