「っ…ちょっと」
内側から鍵をかけるかすみくん。
それを怒ろうと見上げたあたしの目に、不敵に笑う彼が映った。
「誰にでも良い顔しちゃって、悪い子だね」
それは……かすみくんも、同じ。
あたしはまだいいほうでしょ。
と、言い返す間もなく、かすみくんにベッドまで連れられる。
あっという間に押し倒されて、かすみくんが馬乗り状態。
両手を押さえつけられて身動き取れないし、息が止まりそう。
「か、かすみくんのほうが……っ」
「…杏ちゃん、分かってる? ここ、ベッドの上」
「……?」
「そうやってかわいー声で名前呼ぶの、反則」
意味がわからない。
かすみくんの心がこもってない“かわいー”はもう聞き飽きた。
だけど、そうやって首を舐めるから…あたし、また言い返せなくなる。
「…あま」
「っ……」
涙が一筋、こぼれ落ちた。



