「でも、甘野杏はどんな味がするんだろうね」
「……はい?」
いつも突拍子がない。
かすみくんの間を縫って保健室に入ろうとするあたしに、また近づく。
…ドキドキ。
心臓の高鳴りがうるさくて、誤魔化しきれない。
かすみくんが近くにいると、いつも泣き出しそうになる。
「名前の通り甘いのかな」
「……」
「それとも、その性格みたいに苦い?」
知らないし。
この性格はどう考えてもかすみくんのせいだけどね。
…ホント、ムカつく。
自分はいつでも女を取っかえ引っ変えのくせに。
あたしは…小悪魔になるため、こんなに必死なのに。
嫌い、ホント、キライ。
「試してみていい?」
保健室のドアを閉めたあと。
突然、甘く迫ってくるかすみくんが、嫌い。



