「あっ、甘野…さん」
「…なぁに?」
目の前でやけに緊張している面持ちのクラス委員。
丸いメガネの奥が赤く染まっている。
見上げると、その顔はさらに茹で上がってしまった。
「今日提出のプリント…っ」
「あぁ…ごめんね?」
断りを入れてカバンの中を探る。
存在ごと忘れてた。
クリアファイルに綺麗にまとめてあったプリントを取り出すと、クラス委員に手渡す。
そのとき、少しだけ手を触れるのが…ポイント。
「っ…あ、甘野さんって……」
「ん?」
「…誰にでも、こうなの…?」
そうだね。
だから、変な理想は抱かない方がいい。
あたしは誰でもいいの。
“天使”なんかじゃないって思ってくれさえすれば、それで。
「だめ?」
「っ……て、天使…っ」
…やりすぎちゃった。
小悪魔と天使の境界って難しい。
やりすぎると、今みたいに小悪魔を超えて天使扱いされる。