「かわいー…」
思わず口からもれた言葉に、杏は目を丸くして、また泣き出しそうになる。
…なんで泣くの、バカ。
もう泣かなくていいんだよ。
「もう一回聞くよ。杏は、俺のことどう思ってる?」
その質問に、杏は俺の首に両腕をかけて、俺を引き寄せる。
…泣き顔を隠すため? でも、残念。心臓のドキドキは隠せてないよ。
「好きっ……」
うん。
俺も。
「…俺のほうが、好き」
ずっと言いたかった。
叫びたかった。
杏のことが好きだって。
「俺の彼女になってよ、杏」
顔を上げた俺とばっちり目が合う杏は、少し照れくさそうに顔をそむけた。
だけど。
俺は杏の顔をつかんで正面を向かせる。
もう逃がさない。
ちゃんと俺を見てて。
「っ……でも、かすみ…遊び人だし…」
形だけね?
俺はガキだから、それくらいしか杏ちゃんの心を引き寄せる術が思い浮かばなかったんだ。
許してなんて言わない。
「杏ちゃんしか見てない、これからもずっと」
適当な理由をつけて女の子のこと途中で帰らせてたの、知ってる?
恨みを持たれてないほうがラッキーなくらい。
杏しか見てなかったからね。
誰とも体の関係は持ってないんだよ。
「し、信じて…いいの?」
「…うん。信じて」
かわいい。
その顔、もっと見せて。
俺だけに。
「杏ちゃん」
だから、もう一度。



