「っ……好き…」
小さく小さく絞り出された声に、こらえきれず口をつけた。
それ以上、なにも言わなくていい。
…聞けなかったこと、今更聞けた。
「…ま、待っ……」
「静かにして」
ほら。
また、保健室に訪問者。
ガタガタと扉を揺らして、帰っていく。
ごめんね、何年生の誰だか知らないけど。
…杏は、俺のものなんだ、ずっと前から。
「…好き」
そうつぶやいたのは、杏じゃなくて、俺。
杏がリアクションを取る前に、もう一度口を奪った。
…好きだった、もうずっと。
「杏が、好き。…だましてごめんな」
ただの好奇心が、ずっと大きく膨らんで取り返しがつかなくなっていた。
杏のこと泣かせたいなんて、幼いながらに思ってしまったからこじれたんだ。
「…え? どういうこと…」
混乱している目の前の杏が愛おしい。
絶対、誰にも渡したくない。



