「出会った時から、杏ちゃんはずっと天使だったし、小悪魔だった」
でもさ。
「それ以上に、悪魔だったよね。俺も、杏ちゃんも」
お互いがお互いの気持ちをわかろうとしなかった。
好きだったのに、その恋心を捻じ曲げた。
「あ、あたしは…。かすみくんのほうが、天使だと思ってたよ」
そうだろうね。
じゃなかったら、好きになんかならない。
「俺らってさ、ぜんぶ間違えてたよ、最初から」
「え…?」
出会った環境もよくなかったしね。
たぶん。
お互いがはっきり自信を持って好きと言えない時点で、ダメだった。
「杏ちゃんのこと、今までだましてごめん」
「…な、に…」
「最後に聞かせて。…杏、俺のこと嫌い?」
杏の大きな瞳が揺れるのを、見逃さなかった。
…ね、その目に、ずっと恋してたよ、俺は。



