【短編】保健室で甘いコト。






「出会った時から、杏ちゃんはずっと天使だったし、小悪魔だった」




でもさ。




「それ以上に、悪魔だったよね。俺も、杏ちゃんも」






お互いがお互いの気持ちをわかろうとしなかった。




好きだったのに、その恋心を捻じ曲げた。






「あ、あたしは…。かすみくんのほうが、天使だと思ってたよ」






そうだろうね。
じゃなかったら、好きになんかならない。





「俺らってさ、ぜんぶ間違えてたよ、最初から」


「え…?」





出会った環境もよくなかったしね。
たぶん。




お互いがはっきり自信を持って好きと言えない時点で、ダメだった。






「杏ちゃんのこと、今までだましてごめん」


「…な、に…」


「最後に聞かせて。…杏、俺のこと嫌い?」





杏の大きな瞳が揺れるのを、見逃さなかった。




…ね、その目に、ずっと恋してたよ、俺は。