【短編】保健室で甘いコト。







「…う、嘘」


「どうかな」





嘘かもしれないし、本当かもしれないよ。




どっちだろうね?
杏ちゃん。






「かすみくんって……意味不明」






俺からしても、杏ちゃんは意味不明。



分かりやすいけど、心の底までは覗けない。




ね、杏ちゃん。
本当は、俺のことが好き? キライ? どっち?






「俺のこと、好きって言って」





願いはひとつだけ。




杏ちゃんに好かれたい。




それだけ。





「っ…無理でしょ」





うん。
そうだね。




俺が悪いよね。





…だって、気にくわなかった。






「俺はね。…杏ちゃんの隣には似合わないって、ずっと思ってたよ」





中学に入ると同時に知り合った杏ちゃん。
可愛くて優しくて穏やかで、そんな杏ちゃんのことが好きだった。





だからこそ、俺は自分に自信がなくて。




好きだと言ってもらった瞬間、俺の中の自尊心が崩れ去った。