いつからか、キミが”保健室の天使”だなんて呼ばれるようになった。





俺の目から見て整いすぎた顔立ち、色白の肌、澄んだ瞳。
大きく開かれる小動物のような目に吸い込まれそうだと、何度も思った。






「かすみ」





小さな声で俺を呼ぶ。
中学生のセーラーがひらひらと揺れた。




…”かすみ”から、”かすみくん”になったのは、いつからだったか。





「かすみ、だいすき」





大きな瞳から、大粒の涙。



泣かないで、なんて上辺だけの言葉。
ホントは、俺のために泣いてくれるキミが愛おしかった。




次第に、俺はもっと泣いてほしいと思うようになって。
平常心じゃいられなくなったころには、もうそこにキミの姿はなかった。






「…この、悪魔」





胸に鈍痛のような衝撃。
俺はその日、”恋心”が”憎悪”に変わる瞬間を見た。





──いいよ、悪魔なんて、褒め言葉だ。