奴隷は私と同じほどの背丈だったが、体重は私の半分もない。
　そんな奴隷にハンナが、干し肉やら干し果実を惜しげもなく差し出した。
　ハンナは、ひどく食い意地が張っていて、弟妹らの残した食べ物をかすめ取ってくるのが特技だ。
　しかもその特技を私のために活かしていると思い込んでいる。
　スカートの下から取り出した、肉やらパンやら果物やらは、まず私に披露する。

「姫さま、姫さま、おいしいものをいっぱい拾ってきましたよー」

　拾って、というのだから、弟妹たちが床に落としたものなのだろう。
　私は、父に継母に弟妹らと同じ空間を過ごすだけで、吐き気を催すという体質だったので、しょっちゅう具合が悪いということにして、部屋に食事を届けさせている。
　しかし、使用人がときおり、私の部屋に食事を持ってくるのを忘れる。いや、かなりの頻度で忘れる。
　なので、確かにハンナのおかげで何とか生き延びているところはあるが、私よりもハンナのほうがたくさん食べるのだから、やはり、ハンナは自分の食い意地のためにやっていて、私はハンナのおこぼれをもらっているに過ぎない。
　そのハンナの特技は、奴隷のためにも活かされて、次第に奴隷は太ってきた。
　すると、髪は生え始め、肌もきれいになった。乾いて濁っていた目も青く透き通ってきた。