「如月 翔さんですよね?」

 私は単刀直入に訊いた。

「あ、はい。そうですけど……」

 やっぱり!

 ひと目で分かったのは、私は彼のファンだったから。今ロケ地巡りをしている映画も、彼が出演していたからチェックして、それからどハマりした。

 ふと彼が持っている紙袋に目がいった。

 白くてシンプルな紙袋に茶色の文字で『セ トレボン 』と書いてあり、文字の横にケーキのイラストが。

「それって、映画でヒロインと一緒に入ったケーキ屋さんのお店……」

「あ、映画観てくれたの? ありがとう!」

 その映画では、彼は主人公の恋のライバル役で、結局彼は恋に敗れる。けれど一瞬だけヒロインといい感じになり、ヒロインとデートしたシーンの場所だ。

「はい、観ました。実はその映画の、主役たちが結ばれた場所への道が分からなくて……」

 適当にあしらわれると思っていたけれど、イメージとは正反対でなんと気さくに接してくれて、通り道だからと途中まで道案内までしてくれた。

 その時はそれだけだったけれど、なんと後日、仕事帰りに寄ったケーキが美味しいと話題のお店で彼と再び会ったのだ。それから意気投合し、あれやこれや色々あったけれど、付き合うことになった。

 付き合い始めたのは、二年前。
 私が二十九歳、彼が二十五歳の時だった。