自分が守ってあげたい。
自分が理解者になってそばにいてあげたいと願う。
「私はもう菊池さんの本当の姿を知っています」

握りしめている手はピクリと動く。
少しだけ狼の匂いが鼻をかすめた。
だけど大和は人間のままだ。

狼にも人間にもなりきれずに苦しんでいる。
そんな姿だった。
「お願いです。私には甘えてくれませんか?」

千明の頬に涙が流れた。
普段の優しく、話しやすい大和がこんな過酷運命を背負っているだなんて、知らなくて。
すぐに信じてあげることができなかったことが、不甲斐なくて。

「私、それでも菊池さんのことが好きです……」