部屋の中は綺麗に片付いていて、テーブルの上にはフルーツ籠が置かれている。
黒色の冷蔵庫の近くにはワインセラーまである。
どれもこれも千明にとっては無縁なものばかりだ。

「なにか簡単に作るから、その辺に座ってて」
大和がリビングに置かれている革製のソファを顎で示すが千明は一緒に料理をするつもりだった。

こんないい部屋に泊めさせてもらうのだから、なにかお礼をしたかった。
大和が冷蔵庫の中から取り出したのはキャベツとひき肉だった。

「ロールキャベツ? それなら私も作れるけど」
「え、作ってくれるの?」
すっかりお客さんをおもてなしする体勢に入っていた大和が目を丸くした。

「それくらいやっらせてよ」
大和の手から材料を受けとってキッチンへ向かう。
ここも広くて作業がしやすそうだ。

キャベツを一枚一枚ちぎって丁寧に水浴洗いながら、つい周辺に視線を巡らせてしまう。
「そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいだろ」

「なにか見られたくないものでもあるの?」
少し意地悪してそう聞いてみると大和は「ない!」と、即答した。
それからふたりでロールキャベツとスープを作って食卓の準備が整った。