狼上司と秘密の関係

「そんなこと言ってる梨江はどうなの?」
「どうって?」
「恋愛」

千明の質問に梨江は目を丸くして、その後プッと吹き出した。
「そんな素敵で面白いことがあったら、私黙ってないから」
プラプラと手を振って答える梨江に確かにと納得する千明。

もし梨江が恋などすれば、毎日すごくうるさそうだ。
「無理無理。こいつ休日にはずっと引きこもってホラー映画見てるから」
晋也が横から言って笑っている。

「そうなんだ?」
「そうだよ。無類のホラー映画好きで、時間があればすぐに見てるんだからさ」
「晋也はどうしてそんなこと知ってるの?」

千明にとっては梨江がホラー映画好きなこと自体が初耳だった。
あまり、そういう話は聞いてこなかった。
「時々一緒に見てるから」

なんでもないように答えたのは梨江だった。
ようやく手を動かし始めた梨江だけれど、会話にはしっかり入ってくる。