狼上司と秘密の関係

「ふぅ……」
落ち着いて考えれば大和の気持ちも理解できる。
このまま関係を続けていてもいずれ苦しむことになるかもしれないなら、早い方がいい。
そうこうしている間に雨脚は強くなり、バラバラと地面に叩きつけるようになった。

「やっぱり、傘がいるかも」
真っ暗な空を見上げてそう呟いたときだった。

後ろから足音がして振り向くと大和が大きめの黒い傘を持って近づいてきたところだった。
施設内の電気はすでに消されているから、もう帰る支度が終わったんだろう。
なんとなく無言で並んでその場に立つ。

「さっきはごめん。いきなり変なこと言って」
大和が申し訳なさそうに頭をかいて呟く。
千明は左右に首を振った。

「心配、してくれたんだよね?」
「まぁ、そうかな」
大和は頷く。

「子供なんてみんな大変だよ。保育園で嫌ってほど思い知った」
「そうか」
「だからきっと、血なんて関係ないんだと思う」