「GWは帰ってくるって言ってたよね?」
ついこの間のLINEでそう言っていた筈
の史也が、連休は帰省できないと言ってき
た時は、寂しさのあまり思わず語気を強め
てしまったことを思い出す。
「そう思ってたんだけど、店長にバイト
入って欲しいって頼まれたんだ。サークル
の合宿代も稼がなきゃだし、遊びの約束も
入りそうだしさ」
「そんなぁ。せっかく史也の好きな餃子
作ろうと思ってたのに」
「ごめん。夏は帰るから」
そのひと言を最後にぷつりと電話を切っ
てしまった息子。会えない寂しさを吐き出
すことが出来ず、心の隙間を埋めるために
飼い始めたオカメインコのぴぃ助に、
「フミヤにアイタイ」とか
「フミヤがカワイイ」とか呟いていたら、
ぴぃ助はまんまとその言葉を反芻するよう
になってしまった。
その後も、バイトにサークルに友達にと
多事多端な日々を送っているらしい史也か
らの連絡はなく。毎年のようにプレゼント
を贈ってくれた母の日にメッセージが届く
ことすらなく。凪紗はぽっかりと心に穴が
開いたまま、ひとり、鬱々とした日々を過
ごしていた。
「子どもが自立して親から離れていくの
は自然のことなんだって、頭ではわかって
るのよね。でも、気持ちが追いつかないの。
史也が塾から帰ってきてた時間になっても、
『ただいま』って声がしないのが寂しくて」
口に運べないままだったフォークから手
を放し、凪紗は項垂れる。
「わたしは子どもがいないからカウンセ
ラーとしての立場でしか言えないんだけど、
史也君は自分の人生を思いきり愉しんでる
お母さんの姿を見たいんじゃないかな?
子どもはもちろん大切で可愛いだろうけど、
別人格をもった一人の人間なんだし。凪紗
は凪紗で自分の幸せを見つけなきゃ」
ね?と、身を乗り出して顔を覗く親友に、
凪紗は天井を仰ぐ。
「自分の幸せねぇ」
「そう、凪紗の幸せ。この際だから彼氏
でも作りなさいよ。離婚してからずっと男
なんて見向きもしなかったでしょ?せっか
く美人に生まれついたのにこのまま枯れる
なんて勿体ない。枯れない花にならなきゃ」
「美人じゃないって……あっ!」
果歩の言葉に苦笑しかけた凪紗は、ふと
嘉一との再会を思い出す。
「あっ、ってなによ。誰か心当たりでも
あるの?」
「あると言えばあるけど、無いと言えば
ない、のかも」
あるけど無いという気になるニュアンス
に、果歩がさらに身を乗り出した。凪紗は
仕方なく、ぴぃ助がもたらした初カレとの
再会を包み隠さず語ったのだった。
ついこの間のLINEでそう言っていた筈
の史也が、連休は帰省できないと言ってき
た時は、寂しさのあまり思わず語気を強め
てしまったことを思い出す。
「そう思ってたんだけど、店長にバイト
入って欲しいって頼まれたんだ。サークル
の合宿代も稼がなきゃだし、遊びの約束も
入りそうだしさ」
「そんなぁ。せっかく史也の好きな餃子
作ろうと思ってたのに」
「ごめん。夏は帰るから」
そのひと言を最後にぷつりと電話を切っ
てしまった息子。会えない寂しさを吐き出
すことが出来ず、心の隙間を埋めるために
飼い始めたオカメインコのぴぃ助に、
「フミヤにアイタイ」とか
「フミヤがカワイイ」とか呟いていたら、
ぴぃ助はまんまとその言葉を反芻するよう
になってしまった。
その後も、バイトにサークルに友達にと
多事多端な日々を送っているらしい史也か
らの連絡はなく。毎年のようにプレゼント
を贈ってくれた母の日にメッセージが届く
ことすらなく。凪紗はぽっかりと心に穴が
開いたまま、ひとり、鬱々とした日々を過
ごしていた。
「子どもが自立して親から離れていくの
は自然のことなんだって、頭ではわかって
るのよね。でも、気持ちが追いつかないの。
史也が塾から帰ってきてた時間になっても、
『ただいま』って声がしないのが寂しくて」
口に運べないままだったフォークから手
を放し、凪紗は項垂れる。
「わたしは子どもがいないからカウンセ
ラーとしての立場でしか言えないんだけど、
史也君は自分の人生を思いきり愉しんでる
お母さんの姿を見たいんじゃないかな?
子どもはもちろん大切で可愛いだろうけど、
別人格をもった一人の人間なんだし。凪紗
は凪紗で自分の幸せを見つけなきゃ」
ね?と、身を乗り出して顔を覗く親友に、
凪紗は天井を仰ぐ。
「自分の幸せねぇ」
「そう、凪紗の幸せ。この際だから彼氏
でも作りなさいよ。離婚してからずっと男
なんて見向きもしなかったでしょ?せっか
く美人に生まれついたのにこのまま枯れる
なんて勿体ない。枯れない花にならなきゃ」
「美人じゃないって……あっ!」
果歩の言葉に苦笑しかけた凪紗は、ふと
嘉一との再会を思い出す。
「あっ、ってなによ。誰か心当たりでも
あるの?」
「あると言えばあるけど、無いと言えば
ない、のかも」
あるけど無いという気になるニュアンス
に、果歩がさらに身を乗り出した。凪紗は
仕方なく、ぴぃ助がもたらした初カレとの
再会を包み隠さず語ったのだった。



