「ヒギンズ伯爵、テオ団長についてもう少し詳しくお聞かせいただけますか?」
「ええ、私が知っていることでしたら……」

 ヒギンズ伯爵の話によると、そのテオ団長は三年前に東の国リオーネ王国の辺境伯の騎士団に入り、世にも珍しい青い雷を剣をまとわせて戦いあっという間に魔物を制圧したという。

 一年前に騎士団長へ任命されてからは魔物の被害がさらに減ったそうだ。
 魔物の被害は各国でも頭を悩ませる問題で、外交担当のヒギンズ伯爵が視察に訪れ詳しく話を聞いたのがテオの存在を知るきっかけだった。

(青い雷の魔法剣——間違いない、テオ兄様だわ! でも兄様たちが養子に出されたのは八年前なのに、それまでの五年間はどうしていたの……?)

 アマリリスは兄たちから一切の連絡がなかったことや、どこへ養子に出されたのかなんの情報もない。あまりの自分の無力さに奥歯を噛みしめる。

(兄様たちの身になにかがあったから、連絡すら寄越せなかったのよ。だって手紙が届いていたら、きっとケヴィンが渡してくれたはずだもの。それとも、その前にどこかで止めていた……?)