夜会仕様のいつもより煌びやかな衣装を身にまとったルシアンは、三割り増しでキラキラしている。
 アマリリスのアドバイスを受けて、白を基調とした衣装から一転、黒いジャガード織りのウエストコートと長い足を見せつけるようなスリムパンツがよく似合っていた。

 アマリリスも気が進まなかったが、ルシアンの瞳の色であるアメジストの華やかなドレスに身を包み、準備を終えている。

「それにしても……僕の色をまとったリリスは本当に綺麗だね」
「ありがとうございます。その調子でいつものルシアン様の実力を見せつけてくださいませ」
「うん、()()()()()だね。わかったよ」

(あら、今日はとても素直な感じね。いつもだと口説き文句が出てきそうなのに……)

 不思議に思ってアマリリスはルシアンの表情をじっと見つめたが、甘ったるい視線を返されて終わってしまった。それにめげずに微細な表情を読み取る。瞳孔が開いて眉尻が柔らかく下がり、頬があがり唇は弧を描いていた。

(これは明らかに喜びや楽しさを感じている表情だわ。瞳孔が開いているから、私に好意的な感情があるのも間違いないみたい……)

 ほんの少しだけ胸がチクリと痛むのを無視して、アマリリスはルシアンのエスコートに身を委ねる。王族と一緒に夜会へ参加することでアマリリスには当たりが厳しいだろうけど、これが最後だと思えばなんてことはない。

(嫁ぎ先か就職先を斡旋してもらって、兄様たちを探しながら使用人たちの働き口を見つけるためだもの。きっちりやり遂げてみせるわ!)

 そう決心したアマリリスは、気合十分だった。