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「元婚約者のご令嬢になにか思うところはなかったのですか?」
「うーん、相手には悪いなとは思ったけれど、王太子だから婚約者は絶対必要だし。でも、どうしてもリリス以外を好きになれなくて。だから浮気してても目をつぶっていたんだよ」
「ではそのまま目をつぶっていてもよかったのでは?」
「リリスが婚約破棄されると情報を掴んだから、もう無視できなくなったんだよね」

 アマリリスの罪悪感を煽るように、ルシアンは言葉を選んで紡いでいく。

「リリスは僕に対して責任を取る必要があると思うんだ。だからずっと僕のそばにいてくれるよね?」
「いえ、まったくもって責任はないと思います」
「うーん、手強いな。まあ、そんなところも魅力的だけれど」

 ルシアンはアマリリスを手放す気などない。一度あきらめた宝をなにがなんでも手に入れたい。本当はもっと後で気持ちを伝えるつもりだったけれど、こらえきれなくて打ち明けてしまった。それほどアマリリスを深く想っている。