「ダーレン、お前を公爵家の後継者から外す。すでに次男オードリーを後継者とする準備は整った。ああ、公爵家から籍を抜くから早々にこの屋敷から出ていけ」
「そんな……! どうして…… !」
「アマリリスほど聡明な女性なら、ダーレンが後継でも問題ないと考えていたがな。あの日、その女と婚約を結んだ時点でオードリーの後継が決定したのだ」
「……っ!」

 ダーレンは真っ青な顔で俯き、微動だにしなかった。ロベリアはこの展開についていけず、目を白黒させている。

 バックマン公爵は家門を存続、発展させる後継者を選定する義務がある。そのため誰よりも現実を見つめ、冷酷にならなければいけなかった。

 ダーレンのようにまんまと相手の思惑に乗るような愚か者を、公爵家と縁続きにして置けない。妻が感情的になろうとも、息子が愚かな決断を下したとしても、家門を維持するために必要な決断を下しただけだった。

 そして、これがエイドリック一家の破滅の始まりだと、当の本人たちはまだ気付いていない。