ルシアンは状況に応じて相手の望む反応を返しているだけで、他人に興味がないとアマリリスは初めて理解した。

 それなのにアマリリスには手の込んだことをして、ルシアンのものにしようとするくらい強く執着している。

「では、なぜ私に固執しているのでしょうか?」
「それは——僕が君を欲しいと思った……から?」

 アマリリスはクレバリー侯爵家の図書室で読んだ、膨大な書物の記憶を漁った。こういった人間の特徴に心当たりがあったのだ。

(共感性に欠け、自己中心的な思考をするが、とても魅力的で社会的地位が高い場合が多い——サイコパス)

 もし、そうだとしたら。自分はここから抜け出すことができるのか。
 アマリリスは、引きつった笑みを浮かべことしかできなかった。