さて、ルシアンはどう返すのかとアマリリスは透き通る紫の瞳を見つめる。

「……そうか、そうだね。僕のことを心配してくれてありがとう。それでは早速休暇を取るよ。こんなに心配してくれる君にすべて任せてもいいだろうか?」
「ルシアン様。残念ながら今のは十点ですわ」
「ええ、そうかな? 僕の仕事を変わってもらうのはいいアイデアだと思ったのに……」
「ルシアン様がこなされている仕事をやらせるのは、相手に現実を突きつける方法としてはよろしいですが、政務に対してリスクを負うことになります。進言した相手が有能とは限りませんので」
「うーん、なかなか難しいね」

 こうしたことを何度も繰り返し、ルシアンにアマリリスの考え方を刷り込んでいくしかない。実践形式で見本を示し間違いを指摘するのが、一番早く成長していく。

「次の問題です。いつの間に新しい婚約者候補と懇意になられたのですか? つい先日婚約破棄さればかりだというのに、随分行動がお早いのですね」
(意訳:まさかお前、婚約破棄の前から不貞を働いていたんじゃあるまいな?)

 これに対して、ルシアンは朗らかな笑みを浮かべて答えた。