ちなみにこの衣装は、最初からアマリリスの部屋のクローゼットに入っていた。ルシアンの用意周到さには感心するばかりである。

「ええ、そうですね。ルシアン様と一緒にお茶会へ参加するのは初めてですが、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 本当に嬉しそうに薄紫の瞳を細めるルシアンの笑顔は眩しい。アマリリスより三歳上のはずなのに、ルシアンの笑顔を見ているとなぜか庇護欲をそそられる。

 簡単な打ち合わせも終わり、馬車は会場となっているバックマン公爵家へ到着した。

 今日の目的はふたつある。アマリリスの悪評を払拭し、ルシアンの評価を上げること。もうひとつは貴族特有の毒のある言い回しの真意を、ルシアンに理解してもらうことだ。

(さて、それでは本気を出しましょうか)