アマリリスはルシアンの教育手順について考えを改めた。

 嘘を見抜くのは、ある程度貴族特有の嫌味な言い回しに慣れてからの方がいいかもしれない。今までのやり方で政務は問題なく進んでいるようだし、嫌味が理解できれば言葉の裏を読み取れるようになる。

 それから嘘の見破り方を教えた方が効率がよさそうだ。それまではアマリリスが防波堤になればいい。つくづくそんな役回りだが、そこは事務官に言って給金の交渉をすることにした。お金はいくらあっても困ることはない。

 そこでルシアンが呼ばれているお茶会のパートナーとして、一緒に参加することにした。アマリリスが一緒にいれば間違いなく嫌味な貴族言葉が聞けるので、ルシアンにとってもいい勉強になるはずだ。

 幸いにも二週間後にお茶会の予定があったので、アマリリスも同行することに決めた。

「アマリリス先生、ふたりでお茶会に参加するのは初めてだね」

 お茶会の会場へ向かう馬車の中で、アマリリスとルシアンは向かい合わせで座っている。お互いに色やデザインを揃えた衣装を身にまとい、(はた)から見れば仲のいい婚約者のようだ。