ここにあるドレスを着てルシアンの隣に立ったなら、あっという間に貴族たちの話のネタになるだろう。

(まあ、それも込みで引き受けたのだからいいけれど)

 昨日のうちに事務官から教育係の給金や勤務について、簡単に説明を受けたので納得はしている。こういった面倒事も含めての金額設定になっていた。しかもお役目を果たした暁には、希望の嫁ぎ先も紹介してくれるのだ。

 アマリリスはクレバリー家の使用人たちのことも考え、早々にルシアンに教育を施して受け皿を用意すると決意する。

 理解ある嫁ぎ先を用意してもらうか、または仕事先を斡旋できるような職場を紹介してもらうか、とにかくクレバリー侯爵家が没落する前になんとかしたい。そして、できることならお金を貯めて兄を探したいと考えていた。

(時間との勝負ね……幸いルシアン殿下は優秀だし、なんとかなるでしょう)

 その考えが誤りだと気付くのは、わずか一時間のことである。